クレモナ黄金期以来となるイタリア・ヴァイオリン製作の一大王朝を再興させたレアンドロ・ビジャッキ(Leandro Bisiach, 1864-1945)には四人の息子がいた。彼らはいずれも父レアンドロ・シニアの下で早くからヴァイオリン製作やビジネスに関わり、それに一生を捧げたが、父が築いた事業全体の継承者となったのが、ジャコモ(Giacomo Bisiach, 1900-1995)とレアンドロ・ジュニア(Leandro Bisiach jr., 1904-1982)である。この二人は密接に協力していたため、その仕事を切り分けて考えることはできず、二人の工房から出た作品はいずれか一人の作品として区別されることはない。
ジャコモとレアンドロ・ジュニア兄弟は、父レアンドロ・シニア、兄カルロ(Carlo Bisiach, 1892-1968)、イジーノ・ズデルチ(Igino Sderci, 1884-1983)からヴァイオリン製作を学んだ。ジャコモは当初、ニスに関する技法の習得に努め、次に修復技術を重視して学んだ。これは父の路線を継承する上で重要な意味があった。父レアンドロ・シニアがアントニアッツィ兄弟(Riccardo Antoniazzi, 1853-1912; Romeo Antoniazzi, 1862-1925)と協力関係にあった際、アントニアッツィ兄弟がヴァイオリン製作の基礎工程を担当し、レアンドロ・シニアは自身の強みであった板厚の仕上げとニス、そして音響面の最終調整を担当することで大成功を収めた。ジャコモもこれと同様に、優秀な製作者達と協力しながら、重要な仕上げは自身が行うという手法を踏襲したのである。実際ジャコモは、カザルスやメニューインをはじめとする著名演奏家から、楽器の音響調整の名手として厚い信頼を寄せられており、こうした知見はヴァイオリン製作にも大いに活かされた。レアンドロ・ジュニアも同じくヴァイオリン製作を行う傍ら、顧客対応、オールド・ヴァイオリン ycGenLinkToGlossary('old'); ?>の売買、修理などを行った。また、晩年は個人でヴァイオリン製作を続けた。
ジャコモとレアンドロ・ジュニア兄弟は、1932年に父レアンドロ・シニアの引退とともに父の事業を継承し、1972年までヴァイオリン製作を含む事業活動を続けた。協力関係にあった製作者は、前出のイジーノ・ズデルチとその息子ルチアーノ(Luciano Sderci, 1924-)、カミッロ・マンデッリ(Camillo Mandelli, 1873-1956)、ピエロ・パッラヴィチーニ(パラヴィチーニ、Piero Parravicini, 1889-1957)、ジュゼッペ・ステファニーニ(Giuseppe Stefanini, 1908-1992)である。ジャコモとレアンドロ・ジュニア兄弟の作品は、オールド・ヴァイオリンへの知見が活かされた王道のパターン ycGenLinkToGlossary('pattern'); ?>、父レアンドロから受け継いだ美しいニス、当代随一の技術で最適に音響調整された仕上げがその魅力である。