グリュミオーが使用したストラディヴァリとグァルネリ・デル・ジェズ

グリュミオー
画像:Wikipediaより引用

美音のイメージが際立つグリュミオー(Arthur Grumiaux. 1921-1986)は、ストラディヴァリ2挺とグァルネリ・デル・ジェズ2挺を使用した記録があります(所有か貸与かはっきりしないものもあります)。それ以外にはグァダニーニ(Giovanni Battista Guadagnini, 1711-1786)、ヴィヨーム(Jean-Baptiste Vuillaume, 1798-1875)、ファニョーラ(またはファニオラ, Annibale Fagnola, 1866-1939)を所有していたようです。


1715年製 アントニオ・ストラディヴァリ "Titian"

Antonio Stradivari 1714 "Titian"
Antonio Stradivari 1715 "Titian"
画像:Herbert K. Goodkind著 Violin Iconography of Antonio Stradivariより引用
使用期間:c.1954

フランスのエヴリー伯爵(Comte D'Evry)が記録上最古の所有者です。ヴァイオリン製作者でヴァイオリン商のカレッサ(Albert Caressa, 1866-1939)が、この楽器の美しいニスからティツィアーノ(Tiziano Vecellio, 1488-1576)の絵画を想起してこの号名を与えたと言われており、一般に英語綴りの“ティシャン”で知られています。その後はジンバリスト(Efrem Zimbalist, 1889-1985)が所有していた記録があります。

グリュミオーは1954年にパガニーニのヴァイオリン協奏曲第4番を録音する際にこの楽器を使用しましたが、いつからいつまでこの楽器を使用したのか確かなことは不明です。なお1926〜1965年の間はドイツ系アメリカ人銀行家のウォーバーグ(Warburg)家の所有となっており、グリュミオーは貸与を受けていた可能性があります。

2018年現在はチョー・リャンリン(Cho-Liang Lin, 1960-)氏が使用しています。

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1727年製 アントニオ・ストラディヴァリ "Dupont"

Antonio Stradivari 1714 "Dupont"
Antonio Stradivari 1727 "Dupont"
画像:Herbert K. Goodkind著 Violin Iconography of Antonio Stradivariより引用
使用期間:1957?-1986?

ピエール・デュポン将軍(General Pierre Dupont)がヴァイオリン製作者でヴァイオリン商のリュポ(Nicolas Lupot, 1758-1824)から購入したのが最古の記録で、号名の由来ともなっています。

1957年にルノワ伯爵(Count de Launoit)がグリュミオーに貸与するために購入したと言われており、その後1993年まで所有していたため、1957年以降はグリュミオーに生涯貸与されていた可能性があります。

その後はジェニファー・コ―(Jennifer Koh, 1976)氏が使用していた時期があるようです。2015年には中国の篤志家が購入し、2016年よりフランク・ペーター・ツィンマーマン(Frank Peter Zimmermann, 1965-)氏に貸与されています(2018年現在)。

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1739年製 グァルネリ・デル・ジェズ "Museum"

Guarneri del Gesù 1739 "Museum"
Guarneri del Gesù 1739 "Museum"
画像:Karel Jalovec著 Italian Violin Makersより引用
所有期間:c.1963-c.1971

このグァルネリ・デル・ジェズに関しては、記録があまり残っておらず、所有履歴や号名の由来は不明です。グリュミオーの映像等でこの楽器を使用していることは確認できます。

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1744年製 グァルネリ・デル・ジェズ "Rose"

Guarneri del Gesù 1744 "Rose"
Guarneri del Gesù 1744 "Rose"
画像:William E. Hill & Sons著 The Violin Makers of the Guarneri Familyより引用
所有期間:1971-1986

Hennell氏が記録上最古の所有者で、その後はイギリスのヒル商会(W. E. Hill & Sons, fl.1895-1986)の手を経るなどし、1931年までにEric H. Rose氏の所有となりました。号名の由来はこの所有者の名前です。

グリュミオーは1971年にオランダのMax Möller & Sonからこの楽器を購入し、生涯所有しました。確かなことはわかりませんが、それまで所有していた1739年製の同じくグァルネリ・デル・ジェズ“ミュージアム”と入れ替えで入手したようです。

その後1990年にイタリアの銀行が購入し、ウート・ウーギ(Uto Ughi, 1944-)氏が使用するなどしました(2018年現在も使用しているかどうかは不明)。

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