当社の仕入方針

当社におけるヴァイオリン(およびヴィオラ、チェロ、弓)の仕入方針は、お客様に最良の価値をご提供するための指針そのものであり、決して自己満足の基準であってはならないと考えています。

良い弦楽器・弓とはどのようなものなのかは、400年以上に亘るヴァイオリン属の弦楽器の歴史の中で、製作者によるあらゆる改良の試みと、演奏家と聴衆による長年の評価の積み重ねにより、かなりはっきりとしています。現代になって、この400年余りもの間、誰も知り得なかった埋もれた名器が出てくる可能性も、従来の手法を覆す鑑定・選定を行う余地も、ほぼ皆無なのです。

当社は、このような歴史によって培われた知恵とも言うべき基準を常に強く意識しています。その基準は正当性健康状態適正価格の3点に集約できます。ここでは、当社が弦楽器・弓を選択・ご提案する際に重視する、これらの基準をご説明させて頂きます。


正統性

ここでの正統性とは英語でAuthenticityの意であり、本物であること、確実であること、信頼のおけることなどを意味します。

狭義の意味で正統なヴァイオリン(およびヴィオラ、チェロ、弓)とは、一定の評価を歴史に刻んだ製作者の作であることです。もちろん、真贋についての裏づけが十分であることは前提条件です。それ以外に多数ある、製作者の特定できない弦楽器・弓、または無名の製作者による弦楽器・弓についても、評価を受けている弦楽器・弓の様式を備えていれば、広義の意味で正統であると考えます。正統な弦楽器・弓は実は希少で、広義の意味に該当するものを含めても、全体の1割に満たない少数しか存在しません。

当社では正統な弦楽器・弓のみを選択し、お客様にご提供致します。

健康状態

健康状態とは、ヴァイオリン(およびヴィオラ、チェロ、弓)の破損の程度や消耗度を意味します。

他が同等の条件であれば健康状態が良い方が望ましいのは当然です。良好な健康状態の弦楽器・弓は本来の性能を発揮するのみならず、潜在的な故障リスクを低くします。その上、価値の面でも、健康状態の良好なものとそうでないものは、時間が経過するほどに評価の差が開くと考えて頂いて間違いありません。

当社では、製作年代などの条件を加味した上で、当社の基準を満たす良好な健康状態の弦楽器・弓だけを選択致します。基本の一例を挙げますと、製作年代を問わず、裏板の魂柱部分に修復歴のある弦楽器や、スティックに修復歴のある弓は、当社では一切取り扱いません。

適正価格

定価が設定されたコマーシャル・ヴァイオリンを除いて、ヴァイオリン(およびヴィオラ、チェロ、弓)の価格設定は売り手の資質に委ねられることになります。

良いものを出来る限りお求めやすい価格でお客様に提供するのは、単に当然のことであり、ことさら強調することではありません。しかしながら本当に価値のあるものが、合理性に欠ける安い価格で手に入るということは、率直に申し上げればあり得ないことです。一方で、良いものだからと言っていくらでも高い価格であって良いはずはありません。

当社は、適正な相場価格を常に意識することが重要だと考えています。先に述べた正統性と健康状態に問題のない良質の弦楽器・弓を適正価格でお届けすること、それは実は大変難しいことであり、それこそが当社の使命だと考えております。

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